第2回
一条真也
「生老病死をとらえなおす」

 

 人は老いるほど豊かになります。 これから私は、みなさんと一緒に「老い」の持つ意味と価値について、古今東西のさまざまな視点から考えていきたいと思います。
 これまで「老い」は否定的にとらえられがちでした。仏教では、生まれること、老いること、病むこと、そして死ぬこと、すなわち「生老病死」を人間にとっての苦悩とみなしています。現在では、生まれることが苦悩とは考えられなくなってきたにせよ、依然として老病死の苦悩が残ります。
 しかし、私たちが一個の生物である以上、老病死は避けることのできない現実です。それならば、いっそ老病死を苦悩ととらえない方が精神衛生上もよいし、前向きに幸福な人生が歩めるのではないでしょうか。
 苦悩や不幸はすべて人間の心が生みだすものです。ですから、これからは「人は老いるほど豊かになる」という魔法の呪文をいつも心の中で唱えて下さい。必ず、そうなります。