第8回
一条真也
「悪い言葉を口にしない」

 

 あなたは、悪い言葉を口にしていませんか。
 言葉とは、「言の葉」ということ。『万葉集』の時代、言の葉は「生命の葉」という幹から出たものとされ、生命の表現であるといわれました。その言の葉には霊が宿ると考えられ、古くから「言霊(ことだま)」と呼ばれていました。
 これは、口に出した言葉が現実に何らかの影響を与える霊力を持っているとする考え方です。つまり、音声としての言葉が現実化していくとされたわけですね。現在でも、結婚式の席における「別れる」とか「切れる」といった言葉や、受験のときに「落ちる」という言葉を使わないようにするのも、このような言霊信仰に由来しているのです。
 また、自分の意思や感情を積極的に言葉に出すこと、つまり「言いたいことを言う」行為は「言挙げ」として良くないものとされました。言う者の慢心から生まれる悪い言葉とされたのですね。
 そして、最も口にしてはならないのは他人の悪口です。これは必ずわざわいをもたらし、あなたの身に返ってくるものです。くれぐれも、人前で他人の悪口は言わないように。  悪しき言葉は、あなたの身を滅ぼしますよ。