第14回
一条真也
「お辞儀は心を通わせるためのもの」

 

 小笠原流礼法では、「思いやりの心」「うやまいの心」「つつしみの心」を表現する行為、所作を大切にしています。そんな所作の中でも最も重要なのが、相手に対し敬意や感謝の心を表現するために、体をかがめる「屈体(くったい)」です。すなわち、「お辞儀」のことですね。

 お辞儀は、けっして形式だけの虚礼ではありません。わたしは、よく冠婚葬祭の場面などで、いろんな方がお辞儀をする姿を目にします。中には、見とれてしまうほど美しいお辞儀をされる方がいます。「きっと、心のきれいな人なのだろうな」と思ってしまいます。

 わたしはお辞儀のきれいな人が大好きです。就職の採用面接に来た学生さんでも、営業マンの方でも、お辞儀のきれいな人の話に自然と聞き入ってしまいます。わたし以外にも、美しいお辞儀を好む人は多いはず。

 お辞儀は、相手に心を通わせるためのものです。でも、こんな姿をよく見かけます。相手に会って双方がお辞儀をします。相手が頭を下げているのに、こちらは、もう頭を上げている。また、こちらは、ていねいに深々と頭を下げているのに、先方は頭を上げている。

 これでは、心は通っていないのと同じです。心の通うお辞儀をするには相手とタイミングを合わせることも大切ですね。