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一条真也
「世界平和パゴダ〜無縁社会を乗り越える拠点に」

 

こんにちは、一条真也です。
今年の3月3日、北九州市の門司にある「世界平和パゴダ」のウ・ケミンダ大僧正の「お別れ会」が開かれ、縁あってわが社がお世話をさせていただきました。
「世界平和パゴダ」は、日本で唯一のビルマ式寺院として知られています。
第2次世界大戦後、ビルマ政府仏教会と日本の有志によって昭和32年(1957年)に建立されました。「世界平和の祈念」と「戦没者の慰霊」が目的でした。戦時中は門司港から数多い兵隊さんが出兵しました。映画化もされた竹山道雄の名作『ビルマの竪琴』に登場する兵隊さんたちです。残念なことに彼らの半分しか、再び祖国の地を踏むことができませんでした。そこでビルマ式寺院である「世界平和パゴダ」を建立して、霊を慰めようとしたわけです。
ウ・ケミンダ大僧正の死後、パゴダは資金難のため、閉鎖されていました。
8月21日、それを管理する宗教法人の関係者の方々と一緒に、わたしと父は世界平和パゴダを訪れました。 本来は閉鎖されたパゴダ内に入ることはできないのですが、今回は宗教法人の代表役員を務める方に鍵を開けていただいて、中に入ることができました。
生まれて初めて入るパゴダは、素晴らしい聖なる空間でした。まず最初に、わたしは黄金の仏像が置かれている祭壇に向かって合掌しました。三方に貼られているステンドグラスには孔雀が描かれており、じつに見事でした。また、ブッダの生涯を描いたビルマの仏教画がたくさん飾られていました。
この空間にいるだけで、ブッダの息吹に触れているような気がしました。それもそのはず、パゴダの下には仏舎利が納められているそうです。そう、ここは日本で唯一の仏舎利を有する上座部仏教の聖地なのです。今日は父と一緒の訪問でしたが、わたしたち父子ともども、なんとか、この貴重な宗教施設の再開に向けて尽力したいと心から思いました。
8月25日の朝、わたしは父と一緒に、東京都品川区北品川4丁目にあるミャンマー大使館を訪れました。緑豊かで閑静な住宅街の中にある大使館です。ミャンマーのキン・マゥン・ティン駐日大使にお会いするためです。ミャンマーは、国際経済の面からも今もっとも注目されている国の1つです。大使館の正門前で、ミャンマー仏教界の最高位にあるウ・エンダパラ三蔵位大長老にお会いしました。
当日は土曜日なので大使館は休みでしたが、わたしたちは特別に中に入れていただきました。
ミャンマーは上座部仏教の国です。上座部仏教は、かつて「小乗仏教」などとも呼ばれた時期もありましたが、ブッダの本心に近い教えを守り、僧侶たちは厳しい修行に明け暮れています。現在の日本は韓国・中国・ロシアなどと微妙な関係にある国際的に複雑な立場に立たされています。日本を取り囲む各国は自国の利益のみを考えているわけですが、それでは世界平和などには程遠いですね。わたしは、ミャンマーこそは世界平和の鍵を握る国であると思っています。わたしは、「寛容の徳」や「慈悲の徳」を説く仏教の思想、つまりブッダの考え方が世界を救うと信じています。
ミャンマー大使館を訪れたわたしたち親子は、大使館に隣接した大使公邸に案内されました。ここで、キン・マゥン・ティン大使御夫妻およびエンダパラ大長老が迎えて下さいました。そして、大使と大僧正のお二人からサンレーグループの佐久間進会長が重大なミッションを授かりました。そのミッションとは、閉鎖されている世界平和パゴダの再開に向けて「ミャンマー・日本仏教交流委員会」を正式に発足し、委員長に佐久間会長が就任するというものです。
そして28日、北九州市小倉の松柏園ホテルに3人のミャンマー僧が来られました。エンダパラ大長老を筆頭に、新たにミャンマーから世界平和パゴダに派遣されたウ・ヴィマラ長老とウ・ケンミェンタラ僧です。お二人とも、とても清々しい目をされ、かつ威厳に満ちておられます。
新しく赴任されたお二人は28日の夜は松柏園ホテルに宿泊されましたが、翌29日の夜から世界平和パゴダで生活されます。つまり、8月29日をもって「世界平和パゴダ」が再開されたことになります。また、ミャンマーと日本両国の仏教交流及び親善のため、また再開された「世界平和パゴダ」の健全な運営を目的に「ミャンマー・日本仏教交流委員会」が発足し、29日に同ホテルで記者会見が行われました。
記者会見では、エンダパラ大長老より挨拶がありました。大長老は「ミャンマーと日本両国の友好の証である世界平和パゴダが今日から再開され、まことに喜ばしい。テーラワーダ(上座部)仏教の普及によって、日本人の心の安らぎに貢献できることを願っています」と述べられました。
続いて、キン・マゥン・ティン駐日ミャンマー大使より「今回の世界平和パゴダ再開によって、両国の仏教交流と親善が進むことを願っています。日本のみなさまにも広く協力をお願いいたします」として、世界平和パゴダ運営のための募金の協力を日本人に呼びかけられました。振込先は、以下の通りです。
三井住友銀行 五反田支店
口座番号:普通 8416742
口座名義:WORLD PEACE PAGODA FUND AMBASSADOR KHIN MAUNG TIN
続いて、「ミャンマー・日本仏教交流委員会」の佐久間進委員長が、「世界平和パゴダはビルマ戦線での戦没者の慰霊塔のようなイメージが強いですが、もともとパゴダとは聖なる寺院です。この聖地を一日も早く復活すべく微力ながらお手伝いさせていただくことになりました。わたし個人としては、日本が無縁社会を乗り越えるための拠点にもしたいと考えています」と挨拶しました。
最後に、委員の1人として、わたしもマイクを持って話させていただきました。
「『無縁社会』とか『孤族の国』といった言葉があります。日本人のこころの未来は明るいとは言えません。このような状況を乗り越えるシンボルに世界平和パゴダはなり得ると思います。日本で唯一の上座部仏教の聖地であり、ブッダの骨を収める仏舎利も有していることから観光的資源としても大きな可能性を持っています。さらには、建築デザインも素晴らしく、平和のモニュメントとしての意味も限りなく大きいと言えます。わたしは、将来的に広島の原爆ドームと同じく『世界文化遺産』にすることも夢ではないと考えており、ぜひ、ユネスコに申請したいと思っています。諸々のことを含めて、世界平和パゴダの意義と重要性を広く発信していきたいです」と申し上げました。
ユネスコ・世界文化遺産申請のアイデアは大使から大変喜ばれ、会見終了後には「全面的に協力させていただく」とのお言葉を頂戴しました。記者会見の内容は、テレビ各局、新聞各紙も大きく報道してくれました。わたしたち親子がめざす「天下布礼」においても記念すべき日となりました。
すべてを導いて下さったブッダに心から感謝いたします。合掌。

2012.9.15