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一条真也
「有終の美を飾らないということ」

 

 昨年の大晦日、国民的アイドルと呼ばれたSMAPが引退した。期待されていたNHK紅白歌合戦への出場も辞退した。彼らのために空けておいた時間を埋めるためだろうか、紅白では謎の演出が目立った。
 とにかくグダグダ感、ドタバタ感に溢れた紅白だったが、やはり常連だったSMAPのラスト・ステージが見たかった。報道によれば、紅白が放送されている頃、キムタクを除くメンバーは六本木の焼き肉店で打ち上げをしていたという。
 12月26日のフジテレビ系「SMAP×SMAP」最終回にも彼らは生出演しなかった。ファンへの挨拶も、別れの言葉もなかった。
 残念ながら、SMAPの解散は、ジャニーズ史上、いや日本の芸能界史上で「最悪の解散劇」となった。ここまでメンバー間の人間関係のドロドロが露あらわになるのも珍しい。
 解散後の1月3日にファンクラブ会員限定サイトには5人の直筆メッセージが公開されたものの、それぞれ140字にも満たない「つぶやき」のレベルだった。「解散撤回」を願う署名を37万人分以上も集めたファンたちは納得したのだろうか。
 SMAPは「スマスマ」最終回および「紅白」で、五人揃って出演し、最後にはファンに別れを告げ、「有終の美」を飾るべきであったと思う。もちろん、彼らが所属するジャニーズ事務所の責任も大きい。
 有終の美を飾らないと、次のステージには絶対に進めない。じつは、「有終の美を飾らない」は「葬式は、要らない」に通じている。この二つの言葉はともに「愛のない時代」を象徴するキーワードであると言える。
 解散撤回を願う署名を大量に集めたファンはSMAPに限りない「愛」を示した。でも、彼らにファンへの「愛」はあったのだろうか。メンバー間の確執よりも、ファンの心情を優先すべきではなかったか。
 わたしは、解散の真相など知らない。ただ、SMAPが有終の美を飾らなかった事実だけが最後に残った。