第3回
一条真也
「江戸の年代しぐさに学ぶ」
 「江戸しぐさ」が注目を集めています。それは、江戸の商人を中心とした町人たちのあいだで花開いた「思いやり」のかたちです。出会う人すべてを「仏の化身」と考えていた江戸の人々は、相手に失礼のないしぐさを身につけていました。
 その根底には互助共生の精神があるといいます。人にして気持ちいい、してもらって気持ちいい、はたの目に気持ちいいもの、それが江戸しぐさなのです。
 そして、江戸には「年代しぐさ」なるものがありました。儒学の精神を寺子屋で学んだ江戸の町衆には、志学(15歳)、弱冠(20歳)、而立(30歳)、不惑(40歳)、知命(50歳)、耳順(60歳)のしぐさがそれぞれあったのです。
 彼らは、年相応のしぐさを互いに見取り合って、暮らしていました。たとえば歩き方にしても、志学の年代は駆けるように素早く歩き、弱冠の年代は早足、而立の年代は左右を見ながら注意深く歩いたそうです。18歳くらいの志学の若者がぐずぐず歩いていると、二十代の弱冠の者がたしなめ、不惑の年代の者が若いつもりで駆けたりすると、腰を痛めるとされました。
 ぜひ、私たちも学びたい先人の知恵ですね。