命のマネジメント
一条真也
「ミッションこそが企業の命である」

 

 ミッション・マネジメントという言葉をよく聞きます。「ミッション」という言葉は、もともとキリスト教の布教を任務として外国に派遣される人々を意味しましたが、現在はより一般的に、何らかの任務を担って派遣される者や、「社会的使命」を意味します。
 ミッション経営とは、社会について考えながら仕事をし、同時に顧客のための仕事を通して社会に貢献すること。すなわち、顧客の背後には社会があるという意識を持つ経営です。
 ミッションが企業価値を高める時代になってきました。目の前の利益だけを追い求める企業よりも、社会的使命としてのミッションを明確に意識して活動する企業が顧客と社会によって高く評価され、発展していくのです。その意味で、ミッションとは企業の命そのものと言えるでしょう。
 トップ・リーダーだけではなく、その企業の活動に携わる社員全員が共有すべきものがミッションです。第一生命営業調査役の柴田和子氏は、保険セールス日本一を連続20年以上も続け、ギネスブックにも掲載されました。ある年など、たった一人で444億円を売り上げたそうです。
 柴田氏はこの仕事を始めるにあたって保険のことを徹底的に勉強し、残された遺族を救う保険の重要性を学びました。「保険がいかに大切なものか、心底思っていることを一生懸命説明するだけ」「私は常に正しいことをしているという確信があるので、自信を持って保険をすすめることができます」と断言する柴田氏は、自らの仕事に大いなる社会的使命を感じているのです。
 「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助も、「使命感」というものを非常に重視しました。天理教の本部を視察した後、松下電器の使命に気づいたというエピソードは有名です。
 宗教には人間を救うという大きな使命がある。では商売をするものの使命は何か。松下幸之助はそれを、「貧をなくして人々を救うこと」とし、それこそ自らの使命であると悟ったのです。そして、これが彼の経営上の基本的理念となり、その後、事業を一段と力強く進めることができたのです。
 私どもの会社は冠婚葬祭業を営んでいますが、社長である私は、これほど価値のある仕事はほかにないと心の底から思っています。
 平成13年の社長就任以来、「結婚は最高の平和である」と「死は最大の平等である」を二大テーゼに、結婚式や葬儀の一件一件が、実は人類の「平和」「平等」の実現につながっているのだと社員に訴え続けてきました。
 ミッションは、企業の命そのものです。