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一条真也
人の道を提供して

 

全互協は三十周年、私は最近四十歳になった。不惑の年を迎えるにあたり、何をすべきかと色々考えたところ、「不惑」なる言葉の出典である『論語』を精読することにした▼読むと心の琴線に触れるというか、現在の自分が直面している諸問題の答えがすべて書いてあるように思える。そこで四十になる誕生日までに『論語』を四十回読んだ。以後は誕生日ごとに再読し、私が生きた年の数だけ読むつもりだ▼『論語』に導かれた四書五経をはじめとする様々な儒教書も読んでみたが、一貫して葬儀への関心が深いことに驚かされた▼儒教で最も重要とされるのは「礼」だが、これはマナーというよりもモラル、つまり「人の道」である。そして、人の道を歩む上で最も大事なことは、親の葬儀をきちんとあげること。孟子は「人生の最大事は親の葬礼なり」と述べている。ちなみに二番目に大事なのは結婚で、三番目が出産だ▼孔子の母親はもともと葬祭業者であり、孔子は葬儀の重要性を身に染みて感じていた。それが儒教の思想的根幹となった▼日本には、入会さえすれば「人の道」が歩める冠婚葬祭互助会がある。全互協三十年。今日も全国各地で孔子の末裔たちが人々に「人の道」を提供し続けている。
2003年7月23日