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一条真也
心の中の花

 

少し前にSMAPの「世界にひとつだけの花」がヒットした。花屋の店頭にある花々はそれぞれが美しく、決して競い合わない。人間たちも争わずに平和な社会をというメッセージソングだ▼私は大の花好きで、趣味はガーデニングである。いつも思うのだが、花はこの地上のものにしては美しすぎる。天国や極楽には花々が咲き乱れているというが、もともと天上界に属する花の一部がこの世に表出しているのではないだろうか。結婚式や葬儀で花を飾るのも、式場を天上に見立てるためである▼人は花に「癒し」や「救い」を求める。渋谷の小六少女監禁事件はまさに「世も末」と痛感させる嫌な事件だったが、囚われの少女が逃げ込んだ先が生花店というのが象徴的だが、ただ残念なのは、事件後に少女たちの親が誰一人として生花店を訪れ、お礼を述べていないこと▼沖縄には生年祝があり、女の子が十三歳になると親戚・知人が大勢集まって、幸福を願う。これから大人になる少女たちは、人々の期待を裏切らぬよう、しっかり今後の人生を歩むことを誓う。今こそ、本土が「沖縄復帰」して取り入れたい習慣である▼そういえば、沖縄には名曲「花」がある。人として、心の中に花を咲かせたいものだ。
2003年8月25日