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一条真也
相互扶助の実現

 

七月二十三日、全互協総会において社会貢献基金のセレモニーがあり、互助会各社から集められた善意の助成金が諸団体の代表者に手渡された▼互助会の「互助」とは言うまでもなく「相互扶助」のことであるが、もともとこれを唱えたのはクロポトキンだった。彼は一般にはアナキストとして知られているが、ロシアで革命家活動を終えたのち、亡命先のイギリスで一九〇二年に『相互扶助論』を書いた▼ダーウィンの進化論の影響を強く受けながらも、「適者生存の原則」「不断の闘争と生存競争」を批判し、生命が進化する条件は「相互扶助」にあることを論証した本だ。クロポトキンによれば、きわめて長い進化の行程のあいだに、人類の社会には互いに助け合うという本能が発達してきたという▼近所に火事があったとき、人々が手桶に水を汲んでその家に駈けつけるのは、隣人しかも見知らぬ人に対する愛からではない。愛よりは漠然としているが、しかしはるかに広い互助の本能が人間を動かすというのである▼相互扶助が人間の本能ならば、それを基盤とする互助会は普遍的な事業のはずだ。そして真の「相互扶助」を実現するために、社会貢献基金による助成活動の意義はきわめて大きいと思う。
2004年8月10日