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一条真也
玄侑宗久

 

玄侑宗久(げんゆうそうきゅう)という人がいる。現役の僧侶にして芥川賞作家。著書も多く、マスコミにもよく登場する。四十代半ばにして今や、かの瀬戸内寂聴と並び、日本で最も有名な仏教者である▼彼の小説はどれも僧侶が主人公の仏教小説とでも呼ぶべきものだが、特に感銘を受けたのが『アミターバ 無量光明』。人が死んでから葬儀が行われるまでの様子を死者の側から描く前代未聞の作品だ。この本を読めば、誰でも葬儀の必要性を痛感するだろう▼仏教ブームが叫ばれる一方で、宗教心もなく宗教者としてのオーラもない僧侶が増えている。玄侑のように仏教に心から誇りを持ちつつ、葬儀の本質を深く理解する者は少数派のようだ。最近の「文芸春秋」で「新・冠婚葬祭入門」なる特集が組まれたが、「葬式無用という人もいるが、それでも葬式は必要なのか」という質問に対して、玄侑は葬式有用論を堂々と展開した▼葬儀は悲しみを発露し、しかも何かしらそこから力を得る場でもある。弔うというのは、死者を悼み、また家族を慰めることだが、それも一定の型のある時間にこそ瞬発しやすい。日常に戻るため、あえて非日常を作るのが葬儀なのだと力説する玄侑宗久に大きな拍手を!
2004年12月10日