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一条真也
朝鮮半島

 

昨年は「災」の一字に象徴されたように、各種の天災・戦災・人災が相次いだ。私にとって最も印象に残ったニュースといえば、横田めぐみさんのニセ遺骨事件。これには心の底から強い怒りを覚えた。北朝鮮は他国民を愚弄するにも程がある▼とにかく昨年、日本人に一番憎まれたのが将軍様で、愛されたのがヨン様だった。朝鮮半島という同じ半島に住む同一民族でありながら、将軍様とヨン様に対する感情のあまりの正反対ぶりには深く考えさせられる▼もともと朝鮮半島とわが国との縁はとてつもなく深く、さかのぼれば百済(くだら)から儒教と仏教が伝えられた。この二つの教えは、まさに日本人の精神文化を形成する二本柱だ。既存の神道とも平和に共存して、日本独自のハイブリッドで心ゆたかな文化をつくりあげた▼儒教と仏教が日本に伝来したインパクトは、韓流ドラマどころの話ではない。そして忘れてはならないのは、儒教は遺骨を大切にし、他者を尊重する「礼」の心を、仏教は他者を思いやり、慈しむ「慈悲」の心を日本人に教えてくれたことだ▼北朝鮮制裁について、日本政府は急ピッチで検討を進めているという。「礼」も「慈悲」も完全に忘れ去った国家には自らほろびる運命のみが待っている。
2005年2月10日