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一条真也
老いの神話

 

「敬老の日」にちなんだ推計によると、全国の六十五歳以上の高齢者が2556万人となった。初めて総人口の二割に達したわけだ。人口、比率ともに過去最高を更新したわけだが、それに伴い、高齢者の自殺が増加しているのが気になる。増え続ける高齢者は、決して幸福ではないのだ。その背景には世にはびこる「老いの神話」の存在がある▼高齢者を肉体的にも精神的にも衰退し、ただ死を待つだけの存在とみなす考え方だが、この神話は次のようなネガティブなイメージに満ちている。すなわち、老人とは「孤独」「無力」「依存的」「外見に魅力がない」「頭の回りが鈍い」などなど▼しかし、物事というのは何でも見方を変えるだけで、ポジティブなイメージに読み替えることが可能だ。高齢者は孤独なのではなく、「毅然としている」のだ。無力なのではなく、「おだやか」なのだ。依存的なのではなく、「親しみやすい」のだ。外見に魅力がないのではなく、「内面が深い」のだ。そして、頭の回りが鈍いのではなく、「思慮深い」のだ、といった具合▼神道では「老い」というものを神に近づく状態としてとらえている。神への最短距離にいる人間は「翁」と呼ばれる。これこそが真の「老いの神話」であると私は思う。
2005年10月10日