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一条真也
仲人がいますか?

 

私の仲人が亡くなった。前野徹という方で、享年81歳だった。東急グループの五島昇総師の右腕として、東急エージェンシーの社長を永く務められた。同社を電通・博報堂に次ぐ業界第3位の広告代理店に成長させたことで知られる▼また、政界にも広く人脈を持ち、「東急グループの政治部長」という異名があったほどだ。経済界にも顔が広く、いくつもの団体や勉強会を立ち上げ、つねに誰かを「祝う会」か「励ます会」を企画されていた▼そんな故人の座右の銘が、「小才は縁に出会って縁に気づかず、中才は縁に気づいて縁を生かさず、大才は袖すり合った縁をも生かす」だった。いわゆる「柳生家の家訓」として有名なものだ。私はこの言葉を数えきれないほど故人から聞いた。まさに、袖すり合った縁を生かした人だった▼東京の青山葬儀所で行われた葬儀は盛大で、中曽根元首相が葬儀委員長、石原都知事らが友人代表を務めた。安倍首相や民主党の小沢代表、財界の大物たちも全員集合で、別れを惜しんだ▼私は、「仲人は親も同じと知りたれば縁は異なものただ有り難し」との歌を詠んだ。いずれ「仲人」という言葉は死語になるだろうが、その縁は不滅である。あなたには仲人がいますか?(一条)
2007年4月10日