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一条真也
読書の秋

 

読書の秋である。読書は最高の自己投資だと言う人がいる。この上なく割りのいい投資である。どんなに利率のいい金融商品に投資するよりも、確実に多くのリターンをもたらす。しかし、読書は金のためにするものではない。その最大の目的は、自分を高めることにある▼生物のなかで人間のみが、読書によって時間を超えて情報を伝達できる。人間は経験のみでは一つの方法論を体得するのにも数十年かかる。でも、読書なら他人の経験を借りて、一日でできるわけだ。まさに、読書はタイム・ワープの方法に他ならない。特に歴史の本は経験や知恵の宝庫と言えるだろう▼プロイセンの鉄血宰相ビスマルクに「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という有名な言葉がある。歴史を知れば、人間界の法則がわかり、傲慢になることを防ぐ。さらには非常識な行為や馬鹿な真似をすることもないはず。つまり、知恵がつくのである▼ネットでどんな情報でも入手できる時代だ。日本人の活字離れも深刻化している。しかし、電気のない戦場でさえ読める本は、最強のメディアではないだろうか。無人島でさえ読書は可能なのである。今年の秋は、ぜひ一冊でも多くの良書を読んで、賢者になりたいものだ。(一条)
2007年10月10日