第10回
一条真也
「今でも両親が大好きです!」

 

 ある結婚式のエピソードです。
 新婦の父親は地元の名士で、県会議員もされていました。一方、新郎の父親は地元の会社で働く、ごく普通のサラリーマンでした。
 大学の先輩・後輩として知りあった2人は結婚を約束しましたが、新婦の父親から強い反対にあいました。ついに親から勘当された新婦は家を出ましたが、新郎の家族は温かく彼女を迎えてくれました。
 新婦の小さい時からの夢は、結婚式でウエディングドレスを着ることでした。新郎は彼女の夢をかなえるため、結婚式を挙げることにしました。でも、新郎側の参列者は両親も親族もおらず、幼なじみである親友1人でした。
 その親友は、本当に心のこもったスピーチで、「幸せになってね!」と新婦にエールを送りました。感動した新郎の友人たちからも「がんばれよ!」の声が相次ぎました。
 そして、最後のあいさつで新婦は言いました。「私は親から見放された娘です。けれど、私を生んでくれた両親に感謝しております。両親のことは決して恨んではおりません。今でも大好きです!」。
 会場は割れんばかりの拍手と感動の涙に包まれました。