第11回
一条真也
「エレクトーンでお別れ」

 

 あるお葬式のエピソードです。
 小学2年生の男の子が交通事故に遭いました。1カ月後、病院の先生から「手はつくしたが、あと1カ月持つか、2カ月持つか」と両親に伝えられました。その時から、両親は「この子を見送るにはどうすればよいか」について考え抜きました。
 そして、宗教を介さないお別れ会のような形にしたいと思い、1人の「おくりびと」に相談しました。男の子が旅立ったあと、その通りの告別式が開かれました。その中で、エレクトーンの演奏が行われました。その男の子はとても音楽好きで、自分で先生と一緒に作曲したことがありました。その思い出の曲を告別式の際に先生がエレクトーンで弾いたのです。
 聴く者の魂を震わせるようなエレクトーンの音色でした。参列者とともに、「おくりびと」も非常に感動しました。そして、告別式の終了後、両親から「ありがとうございました。あの子も喜んでいると思います」との言葉をかけられ、胸をかきむしられるような感覚を覚え、涙があふれそうになりました。その時から、その「おくりびと」の葬儀に対する思いはより強くなったそうです。