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一条真也
葬式は必要!

 

島田裕巳著『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)が売れている。一読して、タイトルは出版社がつけたものではないかと思った。著者の島田氏はけっして葬式が不要とは述べていないからである▼内容も、葬祭業者批判というより仏教界批判の色合いが強い。特に、戒名や墓の問題に島田氏の批判は厳しく向けられている▼島田氏は同書の冒頭に、「葬式は贅沢である―これが、本書の基本的な考え方であり、メッセージである」と書いている。その後も、何度も「贅沢」という言葉が出てくるので、どうやら「贅沢」がキーワードのようだ▼たしかに葬式は贅沢かもしれない。でも、それは良い意味においてである。なぜなら、人間関係の贅沢につながっているからだ。映画が話題になったが、人は誰でも「おくりびと」、そして、いつかは「おくられびと」である▼一人でも多くの「おくりびと」を得ることが、その人の人間関係の豊かさを示すのだ。贅沢、結構ではないか。大いに、「こころ」の贅沢をしようではないか▼だいたい、葬式は人類の存在基盤であり、「葬式やめますか、人類やめますか」といったレベルの本質的問題である。このような考えをもとにして『葬式は必要!』(双葉新書)を書いた。ご一読を乞う。(一条)
2010年4月10日