第19回
一条真也
『日本一心を揺るがす新聞の社説』

 水谷もりひと著(ごま書房新社)

「それは朝日でも毎日でも読売でもなかった」とのサブタイトルがついています。発行部数1万部という「みやざき中央新聞」の人気社説を集めた本です。読者数も1万人なら、社説に感動して涙した人も1万人だとか。
 本書には、同紙の編集長である著者が、多くの講演や日々のニュースに対して限られた文章に想いを込めて書いた社説41編を収められています。
 たとえば、小学校の宿題にまつわる、こんな社説がありました。
「ある日のこと、小学校1年生の三女、こはるちゃんが学校から帰ってくるなり、うれしそうにこう叫んだ。『お父さ~~ん、今日の宿題は抱っこよ!』 何と、こはるちゃんの担任の先生、『今日はおうちの人から抱っこしてもらってきてね』という宿題を出したのだった。『よっしゃあ!』と、平田さんはしっかりこはるちゃんを抱きしめた。その夜、こはるちゃんはお母さん、おじいちゃん、ひいおばあちゃん、2人のお姉ちゃん、合計6人と『抱っこの宿題』をして、翌日、学校で『抱っこのチャンピオン』になったそうだ。数日後、平田さんはこはるちゃんに聞いてみた。『学校のお友だちはみんな抱っこの宿題をしてきとったね?』するとこんな悲しい答えが返ってきた。『何人か、してきとらんやった。』でも、世の中、捨てたもんじゃない。次に出てきた言葉に救われた。『だけん、その子たちは先生に抱っこしてもらってた』ステキな先生だなぁと思った」
 本書は、さまざまな人々の人生が織り成す「ちょっといい話」がたくさん詰まった1冊です。読んでいると、なぜかポカポカ温かくなってきます。きっと、「こころの風邪薬」とは、こういう本のことなのでしょうね。