第24回
一条真也
『本へのとびら』宮崎駿著(岩波新書)

 

 著者は、あまりにも有名な世界的なアニメーション監督です。
 本書のサブタイトルは「岩波少年文庫を語る」です。宮崎駿と岩波少年文庫という組み合わせに、わたしの胸は期待で高鳴りました。
 スタジオジブリのアニメ映画「借りぐらしのアリエッティ」の原作は、『床下の小人たち』という岩波少年文庫の一冊です。映画の公開と岩波少年文庫創刊60周年を機に、長年少年文庫に親しんできた著者が、400点を超える創刊以来の本の中から、お薦めの50冊を選びました。
 著者は実際に本を手に取り、再読しながら、3ヵ月かけてじっくり選んだそうです。それは小冊子にまとめられ、スタジオジブリで非売品として作成されました。本書の第1部は、それをもとに作成されています。
 現代の日本は非常に先の見えない状況です。でも、こんな時だからこそ児童文学が重要だと著者は言います。児童文学とは「やり直しがきく話」であり、「人生は再生が可能だ」ということを教えてくれるというのです。
 本書の帯には、「大切な本が、一冊あればいい。」と大書され、続いて「宮崎駿が語る、〈児童文学〉への熱い思い」と書かれています。その著者が選んだ「岩波少年文庫の50冊」には、『星の王子さま』『森は生きている』『ふしぎの国のアリス』『くまのプーさん』『秘密の花園』『ハイジ』『ドリトル先生航海記』『クローディアの秘密』『ホビットの冒険』『注文の多い料理店』・・・わたしも夢中になって読んだ名作がズラリと並んでいます。それぞれのタイトルを見ただけで、物語の世界に遊んだ少年時代がよみがえってくるようです。