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一条真也
老人漂流社会

 

「老人漂流社会」が大きな話題になっている。今年の1月に放映されたNHKスペシャルのタイトルだ。高齢者が自らの意志で「死に場所」すら決められない現実が広がっているというショッキングな内容だった▼一人暮らしで体調を壊し、自宅にいられなくなった高齢者。しかし、病院や介護施設も満床で入れない。そのため、短期入所できるタイプの一時的に高齢者を預かってくれる施設を数か月おきに漂流し続けているという▼日本は超高齢社会を迎えている。一人暮らしの高齢者、いわゆる「単身世帯」が500万人を突破する勢いだ。「住まい」を追われ、「死に場所」を求めて漂流する高齢者があふれ出す▼このような異常事態が、すでに起き始めている。以前、NHKスペシャル「無縁社会」が大きな波紋を呼んだが、「老人漂流社会」はその続編と言えよう。しかし、「無縁社会」と違って、絶望だけの内容ではなかった▼番組の最後に登場する介護ヘルパーさんは「人を助けてあげて、いつか自分も助けてもらう」と語った。この言葉に、わたしは希望の光を見た。まさに「相互扶助」そのもの。それを理念とする互助会が真剣に取り組めば、「老人漂流社会」を「老人安住社会」に変えられるのではないか。(一条)
2013.4.10