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一条真也
ホー・チ・ミン廟

 

ベトナムに行ってきた。副座長を務める「アジア冠婚葬祭業国際交流研究会」のミッションある。経済都市のホーチミン市と首都のハノイ市を訪問し、いろんな場所を視察した▼最も興味深かったのは、ホー・チ・ミン廟だった。ベトナム革命を指導した革命家で政治家のホー・チ・ミンの霊廟である▼多くの兵士たちによって厳重に警備され、一年中冷房の効いた内部の部屋に永久保存処置を施された遺体が安にはれている▼生前のホー自身は自己顕示的な人物でなかったという。存命中に自己顕示的行動におよぶことはなかった。その死に際しても本人は火葬およびベトナム各地への分骨を望んでいたという▼本人の希望を無視して永久保存にする行為には違和感をおぼえる。実際に見たホーの遺体は、まるで蝋人形のようだった▼いくらエンバーミングでも、あそこまで完全保存できるものか。もしかしたら、本当に人形では?共産党が独裁する社会主義国家なら、それくらいやりかねない▼レーニンや毛沢東や金日成や金正日の遺体も永久保存されているが、「人間の尊厳」を無視する行為は野蛮そのものであると思う▼それでも死者は死者である。わたしは、ホー・チ・ミンのご遺体に対して鎮魂の祈りを捧げた。(一条)

2014.4.10