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一条真也
ニューヨークの墓地

 

久々にニューヨークに行ってきた。業界の仲間たちと当地の冠婚葬祭事情を視察したが、ブロンクスにあるウッドローン墓地を訪れた。ここは、マンハッタンに住む人々の墓地として、1863年に創設された▼およそ30万人もの死者が眠る。かの野口英世をはじめとした日本人の墓、デューク・エリントン、マイルス・デイビスといったJAZZ界の巨人たちの墓もある▼さらに、アメリカ人の国民文学といえる『白鯨』を書いたメルヴィル、実業の世界で偉大な足跡を残したウェスティンハウス、ウールワース、ベルモントらの墓もあった▼それぞれの墓は、どれも個性的で暗さを感じさせない。人間1人ひとりの人生がアートだと教えてくれる。特に目を引いたのが、同性愛者だったという女性2人が固く抱き合ったモニュメントだった▼この2人は、生前から「死んだら、こんなお墓を作って一緒に入ろうね。そして永遠に一緒にいようね」と約束していたのかもしれない▼あらゆる人生には、ドラマがある。わたしは、永遠に抱きしめ合った彼女たちの人生に想いを馳せ、厳粛な気分になった。「私のお墓の前で泣かないで下さい」という歌詞の歌もあるが、お墓の前で誰かが泣いてくれる人生も良いものだ(一条)

2014.10.10