76
一条真也
おみおくりの作法

 

話題のイギリス映画「おみおくりの作法」を観た。たった一人で亡くなった人の葬儀を行う仕事。その記事を新聞で読んだパゾリーニ監督は、そこに普遍的なものを感じたという▼それは人間の孤独、死、人と人のつながりなどだ。彼はロンドン市内の民生係に同行し、実在の人物、出来事について綿密な取材を重ねたという▼その結果、映画の主人公ジョン・メイが誕生した。几帳面で誠実な地方公務員である彼は、ひたすら孤独死で亡くなった人を弔い続ける▼事務的に処理することもできる仕事を、彼は誠意をもって行う。映画公式HPには、「仕事の枠を越え、死者に対しても敬意を持って真摯に向き合う、それがジョン・メイの作法」と書かれている▼最大のテーマは「葬儀とは誰のものなのか」という問い。死者のためか、残された者のためか。わたしは、葬儀とは死者と生者の両方にとって必要なものと思う▼日本映画にはアカデミー賞を受けた「おくりびと」があるが、「おみおくりの作法」と相互補完する内容であると思う▼「おくりびと」は生者にとっての葬儀を、「おみおくりの作法」は死者にとっての葬儀を見事に描いた。両作品を観れば、葬儀の真の意味がわかる。冠婚葬祭人は必見である。(一条)

2015.2.10