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一条真也
戦後70年

 

8月15日、終戦70周年を迎えた。じつに日本人だけで310万人もの方々が亡くなった、あの悪夢のような戦争から70年という大きな節目を迎えたのである▼3月20日には、地下鉄サリン事件から20周年を迎えている。オウム真理教事件はちょうど戦後50年の年に起こったことになる。あれから、日本人は一気に「宗教嫌い」になった感がある▼家族の絆はドロドロに溶け、血縁も地縁も希薄化して、「無縁社会」などと呼ばれるようになった▼いま、日本人の孤独死、無縁死が問題となり、通夜も告別式もせずに火葬場に直行するという「直葬」も増えている。ついには、遺灰を火葬場に捨てる「0葬」までが登場した。なぜ日本人は、ここまで「死者を軽んじる」民族に落ちぶれたのか▼このたび、戦後70年を記念して『永遠葬』(現代書林)および『唯葬論』(三五館)を上梓した。葬儀は人類の存在基盤である。故人の魂を送ることはもちろん、残された人々の魂にもエネルギーを与えてくれる▼葬儀を行わなければ、愛する者の死によって遺族の心に大きな穴が開き、おそらくは自殺の連鎖が起きただろう。そう、葬儀とは人類の滅亡を防ぐ叡智である。そして、死者を弔う行為は「人の道」そのものなのだ。(一条)
2015.9.10