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一条真也
インド

 

「アジア冠婚葬祭業国際交流研究会」の視察で、生まれて初めてインドに行ってきた。よく「インドに行くと人生観が変わる」という人がいるが、たしかにインパクト大であった▼今回は、聖なるガンジス川をはじめ、サルナート、ブッダガヤ、ラージギルなどの仏教聖地を回った。世界宗教である仏教の布教ルートを追いながら、偉大なるブッダの教えを振り返った▼一方で、毎日膨大な数の物乞いの人々と接し、まざまざと思い知ったことがある。それはブッダがあれほど絶滅させようとしたカースト制度が今も根強く残っていることであった▼カースト制度とは、バラモン教によってつくられ、ヒンズー教に受け継がれた身分制度である。現在は憲法で禁じられているが、その風習は根強く残っている▼夜明け前のガンジス川を訪れたとき、遠藤周作の名作『深い河』の舞台にもなった火葬場を視察した。ここで働く人々は最下層のアウトカーストだそうだが、わたしには人間の魂を彼岸に送る最高の聖職者に思えた▼そのとき、ガンジス川の上空に朝日が昇った。その荘厳な光景を眺めながら、わたしは「ああ、太陽の光はすべての者を等しく照らす!」と感動した。太陽光と同じく、死も万人に平等である。(一条)
2016.4.10