113
一条真也
「絶対に失敗の許されない仕事」
 今年の「成人の日」も全国で多くの新成人が誕生したが、前代未聞の問題が発生した。着物レンタル業者が突然、営業停止したのだ。人生に一度の晴れの日に、振り袖を着られない女性たちが相次いだ。
 この会社では、振り袖や小物のレンタル、写真撮影のほか、成人式当日の着付けなども請け負っていた。しかし、1月8日朝になって、突然、営業を停止した。その後、連絡がつかず、行方もわからないという。
 冠婚葬祭のお手伝いを生業とするわたしは怒髪天を衝く思いである。本当に、こんなに怒りを感じた事件は久しぶりである。人間にとって最も大切なものを奪った、きわめて悪質な犯罪ではないだろうか。
 その一方で、事件が起こった当日、行政関係者も、被害に遭った人の対応のために急遽、ボランティアを集めて、着付けを行ったという。問題の会社とは無関係の美容院などもネットを通じて呼びかけ、新成人を受け入れたと聞く。また、くだんの会社のうち、福岡市内の店舗だけは、「営業するのは当たり前。お嬢様たちを泣かせるわけにはいかない」と午前中は通常対応していたそうだ。こういう善意の人々がいてくれたことがせめてもの救いだ。
 一生に一度の晴れの日を台無しにされた被害者の方々の無念と悔しさを思うと、言葉もない。成人式に限らず、結婚式も葬儀も一生に一度のかけがえのない「セレモニー」であり、「メモリー」である。
 最近、福岡県の葬儀保証組合が破産し、会員から「葬儀サービスが受けられない」と悲鳴が上がっているという報道も記憶に新しい。一部の業者のために冠婚葬祭業界全体の信頼が損なわれるのは残念なことだ。
 冠婚葬祭業は「絶対に失敗の許されない」仕事である。それは一生に一度の大切な日のお手伝いをするからだ。次はないのである。夜逃げする貸衣装店はもちろん論外だが、奇をてらった下品な成人式衣裳を高額で貸し付ける店も罪深いと感じる。