2019
6
株式会社サンレー

 代表取締役社長

  佐久間庸和

この世は縁に満ちている

   全社員が縁行者(えんのぎょうじゃ)を目指そう!

●令和は冠婚葬祭の時代
 改元から1ヵ月が経過しました。天皇陛下の継承儀式という、日本文化の核ともいえる儀式群が行われました。儀式に携わる者として、いま、この時に立ち会えた幸運に感謝し、その推移を見守らせていただくとともに、これから迎える新たな御代が誰にとっても平穏で、そして儀式の花開く時代となることを心より願う次第です。
 天皇陛下の継承儀式は内外のメディアで中継されましたが、ここまで、儀式というものに国民の関心が集まったことは過去に例がないように思います。やはり先帝の生前退位によって「お祝い」ムードが強いことも一因でしょう。ぜひ、この流れの中で至るところで冠婚葬祭が大切にされ、「おめでとう」と「ありがとう」の声が行き交うハートフル・ソサエティを実現したいものです。
 「令和」の出典である『万葉集』に収められている和歌で最も多いのは相聞歌と挽歌、つまり恋愛と鎮魂がテーマです。まさに冠婚葬祭そのものではありませんか。

●高校の同窓会で縁を再確認
 先月19日、わが母校である小倉高校の同窓会総会が開催されました。第105回で、会場は母校の体育館である。わが社の松柏園ホテルがお世話をさせていただきました。
 わたしは高校34期なのですが、その席に着くと、なつかしい顔が揃っていました。いつも思うのは、高校の同級生ほど気の合う存在はないということです。なぜなら、出身地が同じ、年齢が同じ、加えて学力もしくはIQもだいたい同じくらい(?)ということで、三拍子が揃っているからです。
 この日は先輩や後輩、そして同級生たちが1000人以上も参集しました。職業もさまざまで、会社の経営者もいれば、お医者さんも弁護士さんもいます。お坊さんや芸術家の先生もいます。日頃からお世話になっている顔見知りの方にばったり会って、母校が同じだと初めて知ることもしばしばです。多くの方々とお話ししていると、「ああ、良いご縁に恵まれたなあ」と痛感します。

●結婚記念日と隣人祭り
 その翌日は、わたしの結婚記念日でした。それも結婚30周年の記念日でした。わたしたち夫婦は平成元年5月20日に結婚式を挙げました。ちなみに、佐久間会長夫妻も今年で結婚60周年を迎えました。
 人は、いろんな偶然のもとに人と出会います。「浜の真砂」という言葉があるように、数えきれない結婚可能な異性の中からたった1人と結ばれるとは、何たる縁でしょうか!
 同月25日には、サンレーグランドホテルで「世界同時・隣人祭り」が開催されました。「隣人祭り」は、地域の高齢者を中心とした食事会です。2008年10月に初めて開催して以来、わが社は、NPO法人ハートウェル21と連動しながら、「隣人祭り」を中心とした隣人交流イベントのお手伝いを各地で行ってきました。今では年間750回以上にもなりますが、これは大いなる地縁を中心とする縁の祭りと言えるでしょう。

●この世は有縁社会である
 2010年、NHKの番組がきっかけとなり、「無縁社会」という言葉が流行しました。その年は『葬式は、要らない』という本がベストセラーになるなど、日本人の血縁、地縁が希薄化していることを多くの人々が思い知った年になりました。
 しかし、そもそも「無縁社会」という言葉は日本語としておかしいのです。なぜなら、「社会」とは「関係性のある人々のネットワーク」だからです。仏教的に言えば、「縁ある衆生の集まり」という意味なのです。
 つまり「社会」というのは、最初から「有縁」なのですね。そして、目に見えない「縁」なるものを目に見せてくれるのが同窓会であり、隣人祭りであり、さらには結婚式や葬儀、つまり冠婚葬祭ではないでしょうか。

●この世は縁に満ちている
 わたしがいつも言うことですが、冠婚葬祭業には「縁」というインフラが存在します。現在の日本社会は「無縁社会」などと呼ばれていますが、この世に無縁の人などいません。どんな人だって、必ず血縁や地縁があります。そして、多くの人は学校や職場や趣味などでその他にもさまざまな縁を得ていきます。この世には、最初から多くの「縁」で満ちているのです。ただ、それに多くの人々は気づかないだけなのです。
 わたしは、「縁」という目に見えないものを実体化して見えるようにするものこそ冠婚葬祭ではないかと思います。結婚式や葬儀、七五三や成人式や法事・法要のときほど、縁というものが強く意識されることはありません。逆に言えば、冠婚葬祭が行われるとき、「縁」という抽象的概念が実体化され、可視化されるのではないでしょうか。
 いま、冠婚葬祭互助会の社会的役割と使命が問われています。わたしは、互助会の役割とは「良い人間関係づくりのお手伝いをすること」、そして使命とは「冠婚葬祭サービスの提供によって、たくさんの見えない縁を可視化すること」に尽きると思います。
 そして、「縁っていいなあ。家族っていいなあ」と思っていただくには、わたしたち冠婚葬祭業者が本当に参列者に感動を与えられる素晴らしい結婚式やお葬儀を、1件1件お世話させていただくことが大切だと思います。
 冠婚葬祭互助会は「有縁社会」を再構築する力を持っています。「役行者(えんのきょうじゃ)」といえば修験道の祖とされていますが、わたしたちは、世の人々のさまざまな縁を結んでいく「縁行者(えんぎょうじゃ)」を目指したいものですね。

 目に見えぬ縁といふもの目に見せて
       縁行者(えんぎょうじゃ)をわれらめざさん  庸軒