2020
3
株式会社サンレー

 代表取締役社長

  佐久間庸和

グリーフケアの本質を考える

   互助会が推進する理由とは!

●「こころの未来」の最重要課題
 新型コロナウイルスが猛威をふるっています。東京オリンピックの中止も話題になるほどで、不安を感じている人も多いでしょう。一日も早い終息を願いますが、今回はグリーフケアの話をしたいと思います。
 わたしは、グリーフケアの普及が、日本人の「こころの未来」にとっての最重要課題と位置づけています。上智大学グリーフケア研究所の客員教授として教鞭をとりながら、社内でも自助グループを立ちあげグリーフケア・サポートに取り組んでいます。
 2020年からは、副会長を務める全互協と同研究所のコラボを実現させ、互助会業界にグリーフケアを普及させるとともに、グリーフケアの資格認定制度の発足にも取り組みます。全互協内にグリーフワークPTを発足させ、わたしが座長として2021年秋にグリーフケア資格認定制度を開始するべく活動を進めています。

●グリーフケアの本質
 グリーフケアの目的は主に2つあります。「死別の喪失に寄り添う」ことと「死の不安を軽減する」ことです。
 人間にとって最大の不安は「死」です。死の不安を乗り越えるために、人類は哲学・芸術・宗教などを発明し、育ててきました。哲学・芸術・宗教は「死の不安を軽減する」ために存在していると言っても過言ではなく、それらの偉大な営みが「グリーフケア」という一語のもとに集約されてきています。
 「こころの時代」と言われてきて久しいですが、「こころの時代」とは「死を見つめる時代」であり、「グリーフケアの時代」です。そして、そこには科学が必要です。「なぜ葬式は必要か」と考えた場合、そこにサイエンスの光を当てると、「グリーフケア」が浮かび上がってきます。すなわち、グリーフケアこそは、「葬式は必要!」の最大の論理的根拠となるのです。

●互助会のCSRを果たす
 わが社は、2010年の「月あかりの会」発足以来、グリーフケアの実践と普及に取り組んできました。グリーフケアが冠婚葬祭互助会にとってなぜ必要なのでしょうか。
 グリーフケアに限らず、地域社会が困っていることや必要としていることがあれば、互助会の出番です。地域社会に貢献することは、互助会のような地域密着型の企業にとっては事業を永続的に続けていくために必要なことです。それは、互助会が社会的責任(CSR)を果たすことにつながり、地域に認められる存在となる重要なキーポイントだと思います。
 冠婚葬祭互助会は、結婚式と葬儀の施行会社ではなく、冠婚葬祭に係る一切をその事業の目的としています。
 確かに結婚式と葬儀を中心に発展してきた業界ではありますが、結婚式と葬儀のいずれも従来は近親者や地域社会で行なってきたものが、時代の流れにより対応できなくなり、事業化されてきたとも言えます。グリーフケアについても、葬儀後の悲嘆に寄り添うということから考えると、まさに冠婚葬祭の一部分と言えるでしょう。

●新しい「悲縁」の誕生
 グリーフケアも、従来は近親者や地域社会が寄り添いクリアしてきた部分でしたが、現在その部分がなくなり、いま新たに必要とされているのです。
 わが社の営業エリアのような地方都市においては、一般的に両親は地元に、子息は仕事で都市部に住み離れて暮らす例が多く、夫婦の一方が亡くなって、残された方がグリーフケアを必要とれる状況を目の当たりにすることが増えています。
 いま、「血縁」や「地縁」が希薄化する一方で、遺族会や自助グループに代表される「悲縁」を互助会が育てているとも言えます。
 地域社会との交流が減少している中、葬儀から葬儀後において接触することが多く、故人の人となりやその家庭環境が分かっている社員が頼りにされてきています。
 互助会としては、このような状況を放置することはできません。しかしながら、グリーフケアの確かな知識のない中、社員の苦悩も増加しており、グリーフケアを必要とされている方はもちろん、社員そして会社のために必要です。だからこそ、認定資格制度をスタートさせなければならないのです。

●グリーフケアの橋を架ける
 「冠婚葬祭」の中で、グリーフケアは「葬」と「祭」に関わることが多く、「大切な人を亡くしたこと」に対してどのようなことが出来るかということが重要です。
 冠婚葬祭互助会は「誕生」から「死」を迎えるまで人生の通過儀礼に関わっています。葬儀が終わっても法事法要のお世話など故人だけでなくその家族にも寄り添い続け、また新たな「生」や「死」に対しても家族と一緒に寄り添っていきます。
 「死」以降のサイクルの中で会員様の家族をはじめとしたグリーフケアが必要な方にその機会や場所をすることは互助会とお客様のつながりを途絶えさせず、常に顧客としてお付き合いしていけることが考えられます。互助会が人生に必要な儀式やグリーフケアを行うことによって、今まで寺院が担ってきた精神的な欲求を満たすインフラとしての存在価値を冠婚葬祭互助会が担っていくことにもつながってくると考えられます。
 わたしは、全互協の副会長として、また上智大学グリーフケア研究所の客員教授として、両者の間に橋を架けるミッションがあります。そして、サンレーの社長として、その道の第一人者になる覚悟です。ぜひ、みなさんも一緒に歩んで下さい!

 血縁も地縁も消ゆる世の中で
      新たに育つ悲しみの縁   庸軒