第2回
一条真也
『きみの友だち』重松清(新潮文庫)

 

 春です。4月です。進学や進級の季節ですね。

 小学校から高校まで、4月になるのが待ち遠しいような不安なような、落ち着かない気分だったことを記憶しています。上の学年に進級するにせよ、上の学校に進学するにせよ、これまで親しくしていた友人たちと離れ離れになる確率が高かったからです。

 毎日顔を合わせていた仲の良い親友と会えなくなるのは、世界の一部が欠けてしまうような大事件でした。ましてや、親友と死別などしようものなら、それはもう自分の一部を失うことと同じ。

 本書に出てくる恵美ちゃんは、10歳のとき、ある事故によって足が不自由になりました。それ以来、歩くときには、いつも松葉杖をついています。そんな恵美ちゃんには、病気がちな由香ちゃんという親友がいました。ある事件がきっかけとなって、2人はクラスの誰とも付き合わなくなりました。恵美ちゃんは、そのかけがえのない親友と永遠に会えなくなってしまいます。そうです、病弱な由香ちゃんが亡くなってしまうのです。

 昔、1年生になったら友だち100人できるかなという歌がありましたが、当然ながら、友だちは数の問題ではありません。たった1人でも、本当に心を許せ合える親友がいれば何よりの幸せです。

 親友を失った後の恵美ちゃんの再生の物語は、深い感動を呼び起こします。また、この小説の最後には、グランドフィナーレとして結婚式の場面が出てきます。わたしは、こんなにも心に染みる結婚式の描写を他に知りません。涙がとまりませんでした。この春、ぜひお読みください。