第4回
一条真也
『おひとりさまの老後』上野千鶴子著(法研)

 

 いま、「無縁社会」が大きな問題になっています。
 ここ最近、「身元不明の自殺者と見られる死者」や「行き倒れ死」などが急増しているそうです。いわゆる、「無縁死」です。かつての日本社会には「血縁」という家族や親族との絆があり、「地縁」という地域との絆がありました。日本人は、それらを急速に失っているのです。
 そんな時代に、わたしたちはどう生きていけばよいのか。長生きすればするほど、最後にはみんなひとりになります。本書には、そのときの心がまえや生活の仕方などが書かれています。
 すでに数年前に話題となったベストセラーですが、「無縁社会」を意識して読むと、また違った味わいがあります。何よりも文章にリズムがあり、非常に読みやすい本です。また、いわゆる独居老人の問題を扱っているのに全然暗くない。これは、大変な筆力だと感心しました。
 内容も、「友人にはメンテナンスがいる」「ベッドメイトよりテーブルメイト」「メシがうまくなる相手を少人数で」「大晦日ファミリー、失楽園なべ家族」など、ユーモアたっぷりに人間関係を豊かにするノウハウが惜しみなく紹介されており、非常に面白かったです。結局、いくら家族がいなくても、人は「無縁」になってはいけないと、著者は訴えます。本書には、そのための友人づくりのヒントが満載です。
 世界一の高齢国である日本。「おひとりさまの老後」を迎える日本人は確実に増えていきます。本書は、そんな「おひとりさま」たちに対する素晴らしいエールであり、極上の人生論です。