第13回
一条真也
『株式会社 家族』

 山田かおり著、山田まき・絵(リトルモア)

 著者は尼崎出身のファッションデザイナーで、著者の妹によるイラストが添えられています。著者のアヴァンギャルドな家族が描かれています。
 たとえば、決してゴルフ場には行かないのに、スイングのメカニズムを空想だけで何冊もの手帳に綴り続ける父親。この父は、ハンバーガーショップのドライブスルーで注文するとき、ポテトフライのことを必ず「ポテトチップ」と言い、スターバックスを「オートバックス」と言います。
 また、家の前を流れるどぶ川から引き上げられた亀にBB弾を打ち込む少年たちに「あんたら亀にやめなさい」と浦島太郎ばりの助太刀をしたところ、逆に「黙れやおばはん」と少年たちからBB弾を打ち込まれた母親。
 一番笑ったのは、母が「二コールマンキッドて綺麗やね」と言ったことによって、著者は正しい名前がわからなくなってしまったという話でした。
 そして妹は、「知らない人について行ってはいけません、誘拐されてもうちは身代金出されへんから」と幼少の頃から母に叩き込まれ、抜群の自己防衛本能を示していたにもかかわらず、見知らぬおっさんの「マクドナルドに行こう」のひと言であっさり誘拐されてしまいます。また、銭湯で父と一緒に男湯に入ったとき、妹は背中に桜吹雪の墨を入れたおじさんを見て、「きれいなお花咲いてるなぁ。お父さん見てみ」と言いました。
 その言葉を父が徹底的に無視したのは言うまでもありません。
 とにかく本書はスイスイ読めて、たくさん笑えて、少しだけホロリときます。こんなことを言うと無粋ですが、家族でも企業でも、組織をうまくやっていくためにはユーモアが必要であることがよくわかります。