第15回
一条真也
『SF魂』小松左京著(新潮新書)

 

 いま、小松左京が読まれるべきだと思います。大地震に大津波、最悪のレベル7となった原発事故...未曾有の国難に遭って、状況はわたしたちの想像力を完全に追い越してしまいました。
 想像力のチャンピオンといえば、なんといってもSF作家です。古くはヴェルヌやウェルズにはじまり、アシモフやクラーク、ディックといったSF作家たちが多くの作品を残してきました。彼らは、これまで宇宙人襲来、未知のウィルス、人工知能の反乱核戦争、そして人類滅亡といった、ありとあらゆる極限状況をも描いてきたのです。今こそ、わたしたち日本人は、SFにおける想像力を「人類の叡智」として使う時期かもしれません。
 そして、日本には小松左京がいます。『復活の日』『果てしなき流れの果てに』『継ぐのは誰か?』といった大作を発表し、『日本沈没』で大ベストセラー作家となった日本SF界の草分け的存在にして最大の巨匠です。
 本書『SF魂』には、その巨匠によって創作秘話やSFの神髄が語られています。帯には、「私が日本を沈没させました。」と大書されていますが、著者は両親の関東大震災の体験をヒントに『日本沈没』を書いたそうです。
 その後、著者自身が阪神淡路大震災に遭遇し、「あの震災は本当にショックだった。あれだけ地震や地殻変動について調べているのに、阪神間にあんな地震が来るとは思ってもみなかった」と述べています。その直後、著者はうつ状態になったそうですが、いま何を思っているのでしょうか?
 最後に、著者は「SFとは希望である」と述べています。わたしたちが新しい希望を手にするためにも、小松左京のSFを読まなくては!