第2回
一条真也
「月への送魂」

 

 10月18日、北九州市八幡西区にあるサンレーグランドホテルで、「隣人祭り 秋の観月会」というイベントが開催されました。そこで満月に向かってレーザー光線が放たれるという儀式のデモンストレーションが実施されました。「月への送魂」といいます。

  わたしが長年にわたって提唱し、『ロマンティック・デス』(幻冬舎文庫)、『葬式は必要!』(双葉新書)などの著書でも紹介した新時代の葬送儀礼なのですが、その背景にある考え方をお話したいと思います。

  多くの民族の神話と儀礼において、月は死、もしくは魂の再生と関わっています。いつも形が変わらない太陽と違って、規則的に満ち欠けを繰り返す月が、死と再生のシンボルとされたことは自然でしょう。

 ブッダは、満月の夜に生まれ、満月の夜に悟りを開き、満月の夜に亡くなったとされています。ミャンマー、タイ、スリランカといった東南アジアの上座部仏教の国々では今でも満月の日に祭りや反省の儀式を行います。仏教とは、月の力を利用して意識をコントロールする「月の宗教」だと言えるかもしれません。

  仏教のみならず、神道にしろ、キリスト教にしろ、イスラム教にしろ、あらゆる宗教の発生は月と深く関わっています。月は「万教同根」のシンボルです。

 また、わたしたちの肉体とは星々のかけらの仮の宿です。入ってきた物質は役目を終えていずれ外に出てゆく、いや、宇宙に還っていくのです。宇宙から来て宇宙に還る私たちは、宇宙の子なのです。そして、夜空にくっきりと浮かび上がる月は、あたかも輪廻転生の中継基地そのものと言えます。

 人間も動植物も、すべて星のかけらからできている。その意味で月は、生きとし生ける者すべてのもとは同じという「万類同根」のシンボルでもあります。

   かくして、月に「月面聖塔」という地球人類の慰霊塔(ムーン・パゴダ)を建立し、レーザー(霊座)光線を使って、地球から故人の魂を月に送るという計画をわたしは思い立ち、実現をめざしています。

  レーザー光線は宇宙空間でも消滅せず、本当に月まで到達します。わたしは「霊座」という漢字を当てました。レーザーは霊魂の乗り物だと思っています。

  「月への送魂」によって、わたしたちは人間の死の一つひとつが実は宇宙的な事件であることを思い知るでしょう。「月への送魂」こそは、グローバル時代における新しい葬儀の「かたち」だと思っています。