第3回
一条真也
「宇宙葬のこころみ」

 

 いま、「宇宙葬」が大きな関心を集めています。宇宙葬とは、いわゆる散骨の形態の一つで、故人の遺骨などを納めたロケットを宇宙空間に打ち上げます。初の宇宙葬はもう15年以上前に行われました。 

 アメリカに本社を置くエリジウム・スペース社は、宇宙葬を今までよりも安く提供し、より多くの人にサービスを届けようとしています。低価格の宇宙葬はアメリカで大ヒット商品となり、日本にも上陸してきました。 

 同社のトマ・シベCEOは、元NASAの技術者で、なんとハッブル望遠鏡の開発者でもあります。宇宙ビジネスのサイトの取材を受けた彼は、宇宙葬を開始した理由を次のように語っています。

 「多くの人にとって宇宙葬はとても真新しい経験だということはわかっています。それでも死後美しい宇宙空間に行くことは人間にとって意義深いことではないでしょうか。 そう思った私達は、宇宙葬を誰もが利用できるようにするべく、アメリカと日本で事業を始めました」

 「宇宙葬が日本人の葬送の文化にどのような影響をもたらすと考えていますか?」との質問には、次のように答えています。

 「私が調査したところ、日本人の中に最も早く宇宙葬を考えた一人がいます。一条真也という作家で、1980年代にとても素晴らしい本を書いています。 彼は日本の葬儀の未来に対してビジョンを抱いていました。死というものを地上から天へと解き放つ時期が来た、と。 死に対する価値観を変えていくという面で、私は彼に共感し『よしやろう』と思いました。人は死後、宇宙や月に行き、意義深く詩的な最期を迎えるということです」

 なんと、彼のインタビュー記事を読んでいたら、「一条真也」という名前が登場したので、非常に驚きました。そして、しみじみと感動しました。

 『ロマンティック・デス~月と死のセレモニー』(国書刊行会)の中で、わたしが述べた「死のロマン主義」にNASAの重要人物が共感してくれた事実に。そして、彼が起業した宇宙葬のビジネスが実際にアメリカで大成功した事実に・・・・・。

 来年7月には、最初のロケットが打ち上げられます。わたしはアメリカまで打ち上げを見に行く予定です。ぜひ、トマ・シベCEOにも会いたいですね。