第8回
一条真也
「冠婚葬祭入門のこころみ」

 

 日本万国博覧会が開催された1970年、出版史に残る超ベストセラーが誕生しました。『冠婚葬祭入門』塩月弥栄子著(光文社)です。
 じつに308万部を売上げ、シリーズ全体(全4冊)で700万部を超える大ミリオンセラーとなりました。同名でTVドラマ化、映画化もされ、一大ブームを巻き起こしました。

 あの頃、日本人の家族構成やライフスタイルは大きく変貌し、冠婚葬祭もイノベーションの時期を迎えていました。そして、誰もが新しい冠婚葬祭のマナーブックを必要としていたのです。

 今また結婚式も葬儀も大きく変貌しつつあり、「無縁社会」などと呼ばれる社会風潮の中で、冠婚葬祭の意味と内容が変わってきています。

 今こそ、新しい『冠婚葬祭入門』が求められているのです。そこで、わたしは冠婚葬祭のマナーブックを上梓しました。その名も『決定版 冠婚葬祭入門』です。

 同書の版元は創業120年の伝統を誇る実業之日本社です。同社は「論語と算盤」で有名な澁沢栄一翁が創業に関わられたそうで、まことに光栄です。

 「冠婚葬祭」とは何でしょうか。

 結婚式と葬儀のことだと思っている人も多いですね。たしかに婚礼と葬礼は人生の二大儀礼ではありますが、「冠婚葬祭」のすべてではありません。

 結婚式ならびに葬儀の形式は、国により、民族によって、きわめて著しく差異があります。これは世界各国のセレモニーには、その国の長年培われた宗教的伝統や民族的慣習などの「民族的よりどころ」というべきものが反映しているからです。

 日本には、茶の湯・生け花・能・歌舞伎・相撲といった、さまざまな伝統文化があります。そして、それらの伝統文化の根幹にはいずれも「儀式」というものが厳然として存在します。儀式なくして文化はありえず、その意味で儀式とは「文化の核」であると言えます。

 そして、核は不変でも、枝葉は変化します。情報機器のように、冠婚葬祭にもアップデートが必要。基本ルールが「初期設定」なら、マナーは「アップデート」です。

 わたしは、現代日本の冠婚葬祭における「初期設定」と「アップデート」の両方がわかる入門書をめざして、『決定版 冠婚葬祭入門』(実業之日本社)を書きました。ご一読ください。