第27回
佐久間庸和
「ヤンキース観戦」

 

 先月、ニューヨークに行った。わたしが会長を務める業界団体の米国視察ツアーに参加したのである。

 現地では、多くのホテルや冠婚葬祭施設を見て回ったが、日曜日にはヤンキースタジアムで野球観戦した。

 ちょうど、「マー君」こと田中将大投手が75日ぶりに復帰登板するブルージェイズ戦のチケットが入手できた。

 この日は、ホーム球場での最後の日曜日ゲームということもあって、スタジアムは超満員。ワールドシリーズ5回の優勝に貢献し、今シーズン限りで引退するデレク・ジーター選手の応援ムード一色で、その熱気にはすさまじいものがあった。

 試合に先立って国歌斉唱が行われたが、大観衆がみんな立ち上がって静粛にしていたのには感銘を受けた。

 アメリカ人は本当に野球というスポーツを愛しているのだろう。フットボールやバスケットボールもいいが、やっぱり野球がアメリカの国技なのだ。球場のビール売りやポップコーン売りも個性豊かで、野球観戦がさらにエンジョイできる「芸」を持っていた。

 最初の選手紹介で、イチローとマー君がスクリーンで紹介されたとき、やはり日本人として感動した。

 マー君は先発でちょうど70球を投げて5回3分の1を5安打1失点、4奪三振で7月3日以来の13勝目(4敗)を挙げた。マー君の降板後は、リリーフ陣が踏ん張り、打撃陣も追加点を挙げヤンキースが5―2で勝った。
 チームメイトであるイチローもマルチヒットを放って、マー君を援護射撃してくれた。盗塁もばっちり決めて、やっぱりイチローはやってくれる。

 同じヤンキースタジアムのマウンドに、歴史に残る背番号31と背番号19が並んだ場面を肉眼で見ることができて幸せだった。

 イチロー選手は「阪神・淡路大震災」、田中選手は「東日本大震災」の被災者の方々の想いを背負ってきたハートフル・アスリートである。そんなことを考えていたら、胸が熱くなってきた。

 わたしは、69年前に戦争をして殺し合ったアメリカ人と日本人が同じチームメイトとしてベースボールを行っている姿を見て、「ああ、これが平和ということだなあ・・・・・・」としみじみと思った。

 スタジアムを出ると、日本の某テレビ局の撮影クルーがいて、わたしにカメラとマイクが向けられた。「最高のゲームで良かったです!感動しました!」とコメントした。

 数時間後の日本では、ヤンキースの野球帽をかぶったわたしのマヌケ面が全国放送されたそうです。家族と社員が仰天したという。