第35回
佐久間庸和
「民生委員制度を考える」

 

 先日、「黒崎ひびしんホール」の大ホールで民生委員および児童委員の総会に招かれ、講演させていただいた。
 主催は、八幡西区民生委員児童委員協議会で、講演テーマは「人は老いるほど豊かになる」であった。
 ますます進む高齢化社会において、さまざまな「老い」に寄り添いながら活動に取り組む民生委員の方々は、地域住民にもっとも身近な相談・支援者として、地域福祉の増進に努められている。
 そこで、高齢者が住みなれた地域で生き生きとした生活を続けていける支援につながるように「豊かな老い」について、わたしに講演してほしいとの依頼を受けたのだ。
 登壇したわたしは最初に「今日は、民生委員さんの総会で講演できるなんて、本当に光栄です。わたしは『助け合いは人類の本能である』と思っていますが、言うはやすく、行うは難し。文字通りの利他の人生を送っておられるみなさんを心の底から尊敬しています」と、本心を述べた。
 わたしは北九州市が「老福都市」となり、日本が「老福国家」となるために、民生委員の存在はきわめて大きいと考えている。「無縁社会」「老人漂流社会」といわれる現在、独居老人の孤立死を防ぐ民生委員の役割は大きくなる一方だ。
 孤立死が増加する原因の1つは「民生委員制度」が機能しなくなったことではないだろうか。高齢単身者がどのような生活状況、あるいは健康状況にあるかを監視するのが、地域の民生委員の役割である。この民生委員制度が制度疲労を起こして、うまく機能していないように思う。
 わたしは、行政が困っているときは民間に委託すべきだと考える。これは郵便局の事業の一部を宅配便業者が行ったり、警察の仕事の一部を警備業者がやったりするのと同じようなことだ。
 つまり、行政サービスの民間委託ということである。わたしは高齢者を主な対象とした冠婚葬祭互助会を経営しているが、民生委員が少なくて困っているのなら、互助会業界に一任されてはどうか。互助会には高齢者宅を訪問する営業スタッフが多く在籍している。
 例えば、行政からの委託を受け、互助会スタッフが民生委員の方々をサポートして、独居老人の安否確認を行うのである。これは互助会の社会貢献になるだけでなく、「相互扶助」がコンセプトの互助会が本来の使命を果たすことにもなる。
 わたしはこの日本から孤立死をなくし、無縁社会を乗り越えたいと心から願っている。そして北九州市こそ、その最高のチャレンジの場とも思っている。