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一条真也
「のこされた あなたへ」
 今年も「3・11」がやってくる。2011年3月11日は、日本人にとって決して忘れることのできない日である。三陸沖の海底で起こった巨大な地震は、信じられないほどの高さの大津波を引き起こし、東北から関東にかけての太平洋岸の海沿いの街や村々に壊滅的な被害をもたらした。福島の第一原子力発電所の事故も引き起こした。未曾有の大災害は現在進行形で続いている。
 大津波の発生直後、多くの遺体は発見されず、いまだに行方不明の方も少なくない。火葬場も壊れて通常の葬儀をあげることができず、現地では土葬が行われた。海の近くにあった墓も津波の濁流に流された。
 葬儀ができない、遺体がない、墓がない、遺品がない、そして、気持ちのやり場がない・・・・・・まさに「ない、ない」尽くしの状況は、今回の災害のダメージがいかに甚大であり、辛うじて助かった被災者の方々の心にも大きなダメージが残されたことをくっきりと示していた。
 現地では毎日、「人間の尊厳」が問われた。亡くなられた犠牲者の尊厳と、生き残った被災者の尊厳がともに問われ続けたのだ。「葬式は、要らない」などという妄言は、大津波とともに流れ去ってしまった。
 わたしは、東日本大震災で愛する人を亡くした人たちのことを考えた。わが社が取り組んできたグリーフケア活動をさらに推進させた。上級心理カウンセラーの資格を多くの社員が取得した。わたし自身も、グリーフケアについての研究を重ねた。
 愛する人を亡くして、生き残った方々は、これからどう生きるべきなのか。そんなことを考えながら、わたしは『のこされた あなたへ』(佼成出版社)という本を書いた。
 もちろん、どのような言葉をおかけしたとしても、亡くなった方が生き返ることはないし、残された方の悲しみが完全に癒えることもない。しかし、少しでもその悲しみが軽くなることを願って、わたしは時に涙を流しながら書いたのである。