第2回
佐久間庸和
「思いやり都市として」

 

 10月の北九州市は、空前のイベント・ラッシュに沸いた。5日からは全国商工会議所女性会連合会の全国大会が、11日からは日本青年会議所(JC)の全国会員大会が、そして20日からは「B―1グランプリ」が開催された。
 それぞれ多くの人々が北九州市を訪れたわけだが、特にB級グルメの祭典として人気を集めている「B―1」には約61万人もの来場者があったという。
 じつに北九州市の人口の半分に相当する人数が全国から集まったわけであり、ものすごいことである。
 大量の訪問者たちは、北九州市についてどのような感想を持っただろうか。特に、北九州の人々の「ホスピタリティ」をどのように感じてくれただろうか。そのことが気になる。
 わたしが理事を務める社団法人・北九州市観光協会では、毎年、「百万にこにこホスピタリティ運動」を展開している。94年にわたしの父である佐久間進(サンレー会長)が同協会の会長に就任したとき、スタートしたサービス向上運動だ。
 北九州市が観光都市として発展するために、優れたホスピタリティ活動をした市民、企業、団体を表彰する仕組みを作り、観光ボランティアなど、市民参加のさまざまな企画を実施してきた。
 遠来のお客様を温かく迎える「ホスピタリティ」とは、何よりも「思いやり」のかたちである。それは、サービス産業のみならず、これからの社会の最大のキーワードだと思う。
 キリスト教の「愛」、仏教の「慈悲」、また儒教の「仁」などは、すべての人類を幸福にする思想といえる。そして、それらの最大公約数となるものこそ、「思いやり」ではないだろうか。
 その「思いやり」を形にしたものが「礼」や「ホスピタリティ」である。わたしは以前、「思いやり 形にすれば礼となり 横文字ならばホスピタリティ」という短歌を詠んだことがある。洋の東西の違いはあれど、「礼」も「ホスピタリティ」もともに、「思いやり」という最も価値のあるものを形にすることに他ならない。
 「礼」は古代中国で生まれたコンセプトだが、日本には600年来の伝統を持つ小笠原流礼法がある。小笠原流礼法を司ったのは小笠原家だが、かつて小倉は小笠原藩だった。
 小倉に伝わる「礼」の遺伝子は、今回の一連のイベントでどのような「ホスピタリティ」を発揮しただろうか。ビジターたちは、北九州市を好きになってくれただろうか。そのことが気になる。