第13回
佐久間庸和
「サザンが歌う平和」

 

 お盆明けの一番暑い頃、わたしは神戸に向かいました。5年ぶりに復活したサザンオールスターズのライブに参加するためです。

 もう、サイコーでしたね。いきなり3曲目で歌われた「勝手にシンドバッド」をはじめ、数々の思い出の名曲たちが、わたしの魂を揺さぶり続けました。

 最新曲の「ピースとハイライト」も演奏されました。隣国との平和を歌っているのですが、現在ちょっとした物議を醸しています。ミュージック・ビデオには、安倍晋三首相をはじめ、朴槿惠、習近平、バラク・オバマといった各国の首脳のお面を被ったエキストラが登場。つまり、政治的メッセージが含まれているわけですね。

 「ピースとハイライト」では、敵対する国家同士の対話を訴えています。そういった姿勢にも批判が多いです。「いくら対話しても解決できない相手だから、領土問題が紛糾している。桑田佳祐は能天気というか、全く現実を見ていない理想主義者だ」といった意見もあるようですね。

 たしかに、桑田氏は理想主義者なのでしょう。そして、筋金入りのロマンティストなのだと思います。でも、ミュージシャンはそれで良いのではないでしょうか。現実的な問題など、政治家や役人に任せておけばいいではないですか。

 「絵空事かな? お伽噺かな? 互いの幸せ願うことなど」という歌詞もありますが、桑田氏自身も自分が理想主義者であることをよく理解しているのだと思います。

 ライブで実際に「ピースとハイライト」を聴いてみると、なんの問題もない平和ソングでした。ライブのビデオでは「歴史を照らし合わせて 助け合えたらいいじゃない」という歌詞の部分で、日中韓の3首脳が仲良く手を合わせる場面が映し出され、それを見た時はジーンときました。

 わたしは、いずれも儒教文化である日中韓の平和を望んでいます。今年4月には『徹底比較!日中韓しきたりとマナー』(祥伝社黄金文庫)という監修書を上梓しました。

 「ピースとハイライト」には、「知ろうよお互いのイイところ」という歌詞もありますが、まさにその通り!それぞれの国の「しきたり」を知ることは、その国の文化と国民の心を知ることです。それが「お互いのイイところ」を知ることにつながります。

 桑田氏ほどの影響力を持った人が、あえて隣国との平和をうたうのは素晴らしいこと。中国や韓国にも多くのサザン・ファンがいるそうです。いっそ桑田サンが音楽で平和外交してくれないかな?