第16回
佐久間庸和
「素敵なサービス業」

 

 いよいよ新たな就職戦線がスタートした。

 先日、わたしは北九州市立大学で就職活動を直前に控えた大学3年生たちを対象に講演を行いました。主催は北九州市立大学キャリアセンターで、「地元企業経営者から学ぶ~サービス業の魅力と経営者が求める人材~」という依頼であった。

 わたしは「サービス業ほど素敵な仕事はない!~大いなる『おもてなし』の時代へ~」という演題で話した。北九大では、2005年末にも講演している。

 アベノミクス効果のせいか企業の採用意欲は回復傾向にあるようだが、サービス業の人気は低いようだ。

 面接では「わたしは人間が好きなので、ぜひサービス業に就きたいです」とか「学生時代に接客業のアルバイトをしていて、その魅力に取りつかれました」などと言うのだが、サービス業以外の企業銀行の内定を受けると、舌の根も乾かないうちにそちらに乗り換える学生が確かに存在する。

  サービス業が選ばれない理由としては、まず「休みが不規則」などが思い浮かぶが、最大の理由は他にあるようだ。すなわち、製造業のように「仕事が形に残らないので不安」というのである。たしかに、サービス業は目に見えない形なきものを売る仕事だ。

  わたしの愛読書のひとつに、フランスの作家サン=テグジュぺリの名作『星の王子さま』がある。この本に一貫して流れているテーマは、「本当に大切なものは目に見えない」というものだ。

 まさに、サービス業の価値はここにある。思いやり、感謝、感動、癒し、夢、希望など、この世には目には見えないけれども存在する大切なものがたくさんある。逆に本当に大切なものは目に見えない。そして、その本当に大切なものを売る仕事がサービス業なのだ。

 製造業はモノを残す仕事。建設業は地図に残る仕事。ならば、サービス業とは心に残る仕事にほかならない。

 愛用している自動車やスマホ、またビルや橋を見ても、それに関わった人たちの顔は浮かんでこない。でも、サービス業は違う。

 サービス業とは、サービスしてくれた人の顔が浮かんでくる仕事である。お客様の心に自分の顔が浮かんでくる仕事、こんな贅沢なことはないと思ってしまう。

  企業の真の宝は施設ではなく、人だ。特に、わが社のようなホスピタリティ・カンパニーは人がすべて。

 わたしの講演を聴いてくれた学生さんの中から、サービス業の素晴らしさ、面白さに気づいてくれる人が1人でも多く出てくれると大変うれしい。