第143回
一条真也
『サメに襲われたら鼻の頭を叩け』鉄人社編集部編(鉄人文庫)
「最悪の状況を乗り切る100の解決策」というサブタイトルがついています。わたしは日々、多くの本を読みますが、本書ほど多大なインパクトを受けた本はなかなかありません。個人的に大量購入して、片っ端から周囲の人々に配りたいぐらいの名著です。
 本書のカバー表紙には海の中で巨大なサメが女性スイマーに襲いかかろうとするイラストが描かれています。帯には「チケット紛失 ラブホ満室 婚約破棄 ビル火災 通り魔 心肺停止 パワハラ 遭難 巨大地震襲来 旅客船沈没」「『知識』は必ず『ピンチ』を救う」と書かれています。
 SNSで一方的に誹謗中傷されたり、走行中に車のブレーキが急に効かなくなったり、 クレジットカードが不正に使われたり、乗った飛行機が今にも墜落しそうになったり・・・ 人間生きていると、さまざまな危機に遭遇しますし、中には「絶体絶命」というシチュエーションもあるでしょう。
 本書は、わたしたちが直面してもおかしくない100のシチュエーションと、そこを乗り切るための術とヒントを解説した一冊です。「決してあきらめてはいけない。『知識』は必ず『ピンチ』を救う」というメッセージが全編から伝わってきます。
 現在、わたしたちはIT社会の只中にあります。何かトラブルに遭ったり、ピンチに陥ったときは、多くの人はスマホで検索するでしょう。しかし、本書のアマゾン・レビューを見ていると、「わたしは『困ったらスマホでググる』が習慣づいているのですが、この本を読んでいると『こういう状況のときはググれないよなあ・・・そもそも検索ワードがわからないよなあ・・・』と、改めて事前の知識の大切さを感じます」という意見がありました。たしかに、洪水や雪崩で流されていたり、車ごと海中に落ちた際にスマホは使えません。
 また、レビューの中には、「トラブルにあった時、自分の想像のおよぶ範囲の出来事だったり、聞いたことのある話だったら少しは冷静さを取り戻せるものも、全く思いもよらないものだった場合、思考停止に陥って諦めてしまいそうだが、少しでも知っていれば行動をおこすきっかけになると本書を読んでいて強く感じた」という意見もありました。
 わたし自身、本書の「駅のホームから線路に転落したら」という項目を読んで、「線路脇の『退避スペース』に転がれ」ということを知りました。今までは「退避スペース」などというものの存在自体を知らなかったのですが、もう、これからは駅のホームから線路に落ちることなど怖くありません。
「知識」は必ず「ピンチ」を救うのです!