102
一条真也
グリーフケアの時代
 このたび、『グリーフケアの時代―「喪失の悲しみ」に寄り添う』(弘文堂)という本が刊行された。大切な人を失った人たちと、その悲しみを癒やしたいと願う人たちに捧げる、鎮魂のためのテキストブックである。著者は上智大学グリーフケア研究所の3人だ。
 同研究所は、グリーフ(死別による悲嘆)へのケアに関する研究と、グリーフケア、スピリチュアルケアに携わる人材の養成を目的として設立された。「臨床傾聴士」等の資格取得のための専門課程の他、一般向けの公開講座にも力を入れている。
 『グリーフケアの時代』は、学問としてのグリーフケアの要点をまとめた入門書として、大切な人を亡くした本人はもちろん、宗教家や支援職、そして葬祭業者の方々にも資する内容となっている。
 同研究所の所長で特任教授でもある島薗進氏は、第一章「日本人の死生観とグリーフケアの時代」を担当。「『喪の仕事』」と宗教文化」「ともに唱歌・童謡を歌う国民だった」「悲嘆を分かち合うことが困難になる」「寄り集い悲嘆を分かち合う」「グリーフケアと日本人の死生観の更新」などを手がけた。
 同じく特任教授の鎌田東二氏は、第二章「人は何によって生きるのか」を担当し、「予期せぬ痛みと『ヨブ記』の問い」「心の不可思議~仏教の心観」「心の清明~神道の心観」「二種類の死生観~本居宣長と平田篤胤の安心論」「現代人の死生観探究」などを執筆している。
 そして、客員教授のわたしは本名の佐久間庸和名義で第三章「グリーフケア・サポートの実践」を担当。グリーフケアにおける葬儀・遺族会の意義と笑いや読書・映画がグリーフケアからの回復に与える影響について論及している。葬儀や互助会の未来を考えるためにも、ぜひご一読を。(一条真也)